タイム 85点

この映画で主人公が戦う敵はなんと「資本主義」というのだから驚く。アメリカ海兵隊が敵だったアバター並の反米映画だ。ウオール街の大規模なデモが示すように貧富の差が激しいアメリカでは資本主義の変革が求められている。社会主義国は崩壊したが資本主義が正しいというわけではない。行き過ぎた競争原理は一部の資本家が大部分の富を独占する歪んだ社会を生み出した。アンドリュー・ニコル監督は「お金」を「寿命」に置き換える事でそれがいかに不当なことかを描いて見せる。こんなアイディアがあったのかと驚かずにはいられない時代の最先端を行く社会派SF映画だ。



遺伝子操作により人間の老化は25才でストップ。その後の余命はお金のように取引される。人々は腕にデジタル時計が埋め込まれ残りの寿命がカウントダウンされている。スイカのように機械に腕を押し付けると「ピッ」と給料が振り込まれたり、コーヒーを買うと四分間の寿命を支払らったりする。現実世界ではどんなにお金を溜め込もうと一生分しか使えないわけだが、この世界の裕福層は千年という寿命を持て余し、50年もする高級車を買うことができる。一方、貧困層の寿命は24時間しかなく明日の寿命を稼ぐのに精一杯。現実では持ち金がゼロになっても死んだりしないが、ここではカウンターがゼロになったら本当に死ななければいけない。そして物価や金利をコントロールされ這い上がってこれないようなシステムが出来上がっている。金持ちの贅沢三昧は貧乏人の命を削って成り立っているわけだ。スラム地区に住む主人公はあることから百年の寿命を得、この理不尽な世の中に立ち向かう。



現実世界の自由な貨幣経済だって民主主義のふりをしているが巧妙に仕組まれた搾取なのではないか。この映画はこのことを感覚的にわからせてくれる。そんな鮮やかな脚本のため未来的な装置がなくても十分SF映画になっている。皮膚の中で光るボディクロック以外、車も街もほぼ現代と一緒。25歳から年をとらないから母も娘も見た目が一緒という光景も奇妙で面白い。マイナスポイントとしては主人公のキャラが立っていないこと。淡々とした演出が重みに欠けること。それで85点になってしまったが、資本主義をテーマにSFアクションを作ってしまうアイディアにはホントに目から鱗だった。
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