パンズ・ラビリンス 90点

ファンタジーとはなんだろうか。自分が安全でいられるシェルター。輝いていられる王国。そこに逃避することで心の傷を癒し、現実世界に希望を見出す。辛い現実を生きて行くために必要なものに違いない。少女オフェリアにとってこの世はひどいところだよ。

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内戦のスペインが舞台。身重の母に連れられて再婚相手の家にやってくるんだけど、新しく父となる男は母のお腹の自分の子供にしか興味がなくオフェリアには目もくれない。そして独裁政権の軍人で冷酷なサディストだ。彼がレジスタンスの疑いで捕えた親子を殺すシーンがあるのだけど、そのやり方が原始的っていうか思いつきっていうか、かなり恐ろしいシーンだった。この男が恐怖の存在としてこの映画を支配しているんだよねえ。

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孤独と不安の中でオフェリアは妖精に導かれて森の中の遺跡のような入り口に入って行く。そこに牧羊神パンが現れ彼女こそ地下世界のプリンセスであること、王女に戻るために3つの試練をくぐり抜けなければいけないことを告げる。この地下世界がダークだねえ。妖精なんてナナフシなんだから。パンも悪魔にしか見えないし、ほとんどホラー映画。それを巨匠が撮ったような重厚な映像美で描くのが最高です。ヨーロッパ映画みたいな雰囲気なんだよねえ。っていうかスペイン映画だけど。

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リアルな戦争の現実世界とダークなファンタジー世界が交互に描かれるんだけど両者は交差しそうで交差しないわけよ。ファンタジー世界の住人は現実世界の悪人を退治したりはしない。普通は助けるでしょ。姫なんだし。手に目がついたペイルマンとかがさ、地獄の底に引きずりこむとかするでしょ。でもしない。ここがこの作品の非情なところなんだよねえ。すべてはオフェリアの想像かもしれないという距離を保ち続ける。

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ラストはハッピーエンドとも悲惨な最後ともとれるようになっている。地下世界は本当にあったのかオフェリアの空想だったのか。見る人の意見が別れるところだけど、俺は両方とも本当なんだって言いたい。戦争は個人の力ではどうにもならないほど残酷。でも心の聖域は誰も壊すことができない。それがファンタジー世界なんだっていうメッセージ。それが世界中の人々が天国と言っている場所なのだろうと思うわけなんだ。
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