落下の王国/The Fall  100点

これは凄い映像だなあ〜。ファンタジー映画なのにCGを使わない。実際に凄い風景や凄い建造物を舞台にして撮影してるんだよねえ。エッシャーのだまし絵のようなインドの階段井戸とか、4000mの高地にある鏡のような湖とか、こんなものが世界にはあるのか〜っていうような絶景の数々。なんと世界24カ国をまわって作ったというんだから。その場所に行くまでの苦労、撮影の許可とかそうとう大変だはずよ。今はCGっていうのがあたりまえになってるじゃない。だから実在の風景っていうのが凄い新鮮なんだよねえ。そこを舞台に石岡瑛子のカラフルでシュールな衣装の数々。これが最高だわけ。網膜に焼き付けられるようなインパクトのある映像の連続。素晴らしい!

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ターセム監督はアルメニア人の「パラジャーノフ」に影響を受けている。アルメニア人の民族的な世界を詩的で絵画のように表現した孤高の映像作家。イスラムのようなキリスト教のような不思議な世界観なんだけど、それをターセムは自身の出身地、インドに置き換えて、さらにキューブリック監督のような巨大な世界まで拡大した。そして、こういうアートの領域でやることを娯楽映画の枠内でやってしまう。最高だなあ。こういう監督大好きだ。しかもこの作品は自分の撮りたい物だけを撮るということで自費で作ったっていうんだから。全財産つぎ込んだわけかあ。凄い監督だよ。

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この凄い映像を支える物語がこれまた面白い。撮影で重傷を負い主演俳優に恋人も取られてしまったスタントマンのロイ。同じ病院にいる腕にギブスをはめた少女カティンカに物語を聞かせはじめる。6人の勇者が暴君に復讐を果たすというストーリー。しかもその場で思いついたストーリーなのだ。それがカティンカの頭の中で映像化されるため、身近な人がキャスティングされている。お姫様は看護婦さん。黒人の勇者は氷を売りにくる黒人青年とか。カティンカが気に入らないと物語の筋が変更されたりするんだよ。お姫様を殺しちゃだめ〜とか言うと、実は死んでいませんでした〜なんていうふうに。叙事詩風の壮大なストーリーが子供とのやりとりの中でアドリブ的に展開していく。このアイディアが素晴らしい。

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そして全体は子供目線で進行するんだよねえ。そのためハッピーで明るい雰囲気なんだよ。似たようなテーマの「パンズラビリンス」とは真逆。最初はいろんなことが子供の理解できる範囲でしか明らかにされない。それが徐々に観客に分かっていくという演出が上手い。カティンカは移民で家を焼かれお父さんは殺されたらしいこと。そしてスタントマンは半身不随のようで自暴自棄になっており自殺したがっていることが分かっていく。物語にもそれが反映しはじめ勇者達は戦いの中で次々と最期を遂げていく。悲鳴が口から鳥になって出て行く霊者や自殺に失敗したスタントマンが半狂乱に叫ぶシーンは痛々しい。カティンカの見るブラザーズクエイ風の悪夢も恐ろしい。

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しかし最期はハッピーエンド。泣く小には勝てないねえ〜。バスターキートンなんかのサイレント時代のドタバタコメディで活躍したスタントマンへのオマージュが捧げられる。
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