クラッシュ 80点

ポールハギスという脚本家が監督。すばらしい脚本だった。ロサンゼルスの人種問題をテーマにした人間群像劇。黒人、アジア人、白人、女性、ヒスパニック、イスラム系、問題を抱えたたくさんの登場人物達が交差していく。

特に黒人はいろんなタイプがでてるね。なんでもかんでも差別だーという、差別に敏感なやつ。それを気にし過ぎだといってなだめるやつ。白人社会で暮らすインテリっぽい黒人。無意識に白人に迎合しようとする態度が気に入らないその奥さん。感情がリアルだし複雑だよね。ポスターにもなってる女性を抱きかかえてるシーンだけど、この意味って想像とはまるで違ってたんで驚いた。この2名は愛し合ってるわけではないのです。こんな流れでこのシーンだったのか!って感じです。

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それぞれの登場人物の物語の交差のさせかたが素晴らしい。こういう群像ドラマ。マグノリアとかヒアアフターとか、いろいろあるけど、それぞれの登場人物達のかかわり合い方、お互いの影響の与え方、そのバランスがとてもよくて、これぞ決定版ではないだろうかという感じですね。

勧善懲悪ではないとこにもっていくのが新鮮だった。なんていやなやつなんだと思っていたら、すごい活躍をしたり、いいやつなのにな不幸な目にあったり、不幸な目にあって同情してたら悪い奴だったり。

ふつう、やな奴は最後は報いを受けて、それで観客もよかったよかったとなるわけだよね。いいやつは最後はちょっと報われたりするでしょ。でもそうならない。そうならないのにこの映画は面白いんだよ。なんでだろう?

これが現実なんだー、現実って結局こんなもんだー、という後味の悪い映画でもないんだよね。これが不思議だ。

軽くもないけど重くもないようなバランス感覚が素晴らしいのかも。クリントイーストウッドの映画みたいだよね。

脚本家なのに演出も素晴らしかったね。ロサンゼルスで刑事物みたいな感じで、ドラマとくれば、これって普段見ているCSIとかのアメリカドラマとかわらないのでは?とも思ったんだけど、そのへんもやっぱちょっと映像の感じとか違うし、悲しげな雰囲気とかあって、やっぱ映画を見たっていう味わいだ。

ただ、クライマックスともいえる「マントのエピソード」の演出が、ややぎこちなかったかなあ。ここに何か演出技が欲しかったところだ。あのタイミングで出てきて、それを間違って撃つかね?映像で見ると不自然。あえて見せない方がよかったのではないか。

また「聖人像」のエピソードも、あの結果に結びつけるための無理矢理感がぬぐえない。ここはもう少し穏やかな結末の方がよかったのでは?

とはいえ、いままでにない素晴らしい脚本。傑作だったのでした。
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