草原の実験 95点 ウルガ+サクリファイス 

大傑作だった「草原の実験」!いやーよかったよかった。
マッシーオールタイムにランクインだね。

変わったタイトルだよね。実験なんて題だから「トルーマンショー」みたいな実は全部作られた世界だった、という感じかなと思ったけど、そこまで入り組んではいなかった。なんとなく想像した通りのシンプルな映画です。しかし、ここまでの映像美映画だったとは知らなんだ!。

もう始まった瞬間から素晴らしいシーンの連続ですよ。鳥の羽が舞う大地、壊れたテーブル、寝る男のアップ、羊の柔らかな羊毛、草原のトラック、映像美がひたすら続くことの快感。タルコフスキーの映画みたいに神秘的な感じだ。草原が舞台だから「ウルガ」も連想したよ。枯れた木はもちろん「サクリファイス」だよね。

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カメラが真正面とか、真横とか、俯瞰とか、シーンがいちいち絵として完成されている。シンメトリーとか、イコンとか、神話的なんだよね。そしてセリフがないので、なんだか動く紙芝居というか、動く写真集を見ているような感じだ。象徴的で寓話的だ。昔話のような素朴さがある。それが衝撃のラストにつながる。寓話っぽさが衝撃を和らげつつも、心の深いところに残る。一生忘れない映画になるだろう。

モンゴルのような草原に住む父と娘。娘は美少女だねえ。韓国とロシアのハーフだそうだ。ちょうど日本人が美人ーって思う感じだよ。エレーナ・アンという子。演技経験なしの素人だそうだ。その父はいかにもモンゴロイドって感じでちょっと親子に見えない。なんでこんなに違う容姿の俳優にしたのかねえ。おかげで「実は本当は親子じゃないのかも」と疑いの目で見てしまった。そして幼なじみの青年。こちらもモンゴルの大地と共に生きるような青年。正直主人公が美少女すぎて映画の中で浮いているようにも感じる。もうちょっと普通のルックスの方が良かったような気もする。そこに他所からやってきた青い目の青年。ほのかな三角関係みたいになる。幻灯機のシーンはいいねえーー。なんだかラピュタのパズーとシータを彷彿とさせる。無垢な二人が微笑ましくていいんだ。

セリフがない。それが自然すぎて、セリフが必要ないっていう感じがあって、これが凄く効果的な演出になっている。若干、お父さんが帰ってきて銃を向けるシーンとか、セリフがあれば、父親だってすぐにわかるのに、とか、そういう不自然さも少しはあるけど。もう、この、シーンとした中で、風の音とか、虫の声とか。広大な風景を娘がとことこ歩いていく感じ。遠くからトラックがやってくる感じ。そういう感じがいいよねえ。

そして全然説明がない。父親の仕事もわからない。母親がいないことも説明されない。そういう説明のなさが、一体、これは、なんなんだろう?とジーーと画面を見ることになる。

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映像だけで物語を語っていくのが、とても新鮮だった。翼のない飛行機のシーンはすごくいいねえ。雲と見せかけてからの、ときて、そして最後に翼がないじゃん!ってなる演出。その中で父親の過去がさりげなく描かれて、娘がさりげなく物語にフェードインしてくる。うまいなあ。この飛行機がどうやってここまで来たのかって?それは考えないようにね。

最後は衝撃的だなあ。唐突というか。ずっと不穏な空気はあったけどね。で、これ、二回見てみると、オープニングがあまりにも悲しいシーンだったということに気づいて愕然となりますよね。そして、あれ!?っと思ったのだけど、三回目くらいに出てくる「夕日」だよ。ちょっと不自然な夕日なのかな?あれは、ひょっとして??うん、きっとそういうことなのだろう。

ということは、この草原がそういう場所だっていうことは、この登場人物達はみんな知っていたっていうことになるかもしれない。うーん、そうなのかも。

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本当に素晴らしい大傑作だと思うのだけど、実は、若干、説明が上手くないというか、演出が良くないかなと思うところがいくつかあって、、、いや、これがたくさんあるんです。

飛行機のプロペラの風向きが逆じゃんっていうのがまずあるよね。

あと、青年が馬で迎えにくるところ。ここは父親の仕事場に行くのに、途中まで娘がトラックを運転して、分かれ道のところで車を降りると、馬の青年が迎えに来て、娘の自宅まで送り届ける。この状況が正直わかりにくい。なんでこんなことしてるんだろう。分かれ道もとても象徴的だから、何かの伏線かと思ったけど、全然関係なかったし。

また、父親が死んだ後、トラックで家を出て、また戻ると、結婚式の準備がされているシーン。ここはてっきり馬の青年の家に行ったのだとばかり思っていた。家に戻ったっていうのと、青年の一家が自宅にやってきた、っていう説明がないのでわかりにくい。

ロシアの青年が決闘?の後、彷徨って、海が出てくるけど、これはなんだろう? 暗闇の中で方向が分からなくなって雷が木に落ちて、娘の家がわかる?っていうところも、ちょっと説明が上手くない。木の影はわかるけど、その隣の家のシルエットが映らないので、ここは娘の家とは関係ないのかと思ってた。

というわけで、この映画は、ちょっとここはこうした方がいいんじゃないか?というところが何箇所かある。

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が、そんなこともはねのけて、95点という今年最大級の感動を与えてくれた。素晴らしい映画なのです。
そしてこれは史実をもとにした映画。これに近いことが実際にあったという歴史をこの映画は刻んでくれた。

この映画を見る少し前にタルコフスキーのストーカー、ノスタルジア、サクリファイスを見たのだけど、映像が凄く好きなんだけど、ちょっとセリフの内容がよくわからないとか、どうしても途中で寝てしまう、という感じで、頑張らないと、心の底からタルコフスキーいいねーーって言えないっていう感じだった。そんな俺に草原の実験はあまりにもスーーーと入ってきて、ノスタルジアばりの映像美だし、もう最高じゃん!ってなる映画ですね。眠くならないタルコフスキー!アレクサンドル・コット監督。次回もすごい傑作を作る予感だ。
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