ウンタマギルー 80点

久々にウンタマギルーを見た。幻の映画だと思っていたが、なんとYOUTUBEやギャオで見れることが驚きだ。

沖縄のデビッドリンチともいうべき高嶺剛(ごう)監督の作品。作られたのが1989年で、この時代といえば、まさにデビッドリンチがブルーベルベット、ツインピークス、ワイルドアットハートとブレイクしていた時期だ。こういうシュルリアリズム映画は普通の映画とはだいぶ違うので意味不明という方も多いと思うが、言ってみれば監督の見た「夢」のような映画なので、それを音楽を聞くように楽しんで見ればいい。監督の生きた時代の沖縄や風土がすごく反映されてて、全編に漂うチルダイ(ダラーっとした)な雰囲気と強い太陽の作り出す光と影の濃厚な作品。どこを切っても「沖縄」なアジクーター(味の濃い)ムービーはもはや文化遺産だ。

照屋林助のワタブーショーが狂言回し的な役割でバッチリフィーチャーされていてすごく楽しい。この映像の中に自分も入って行って一緒に演奏したいものだ。なんかすごく心地いいんだよね。テルリンさんは三線にギターのネックをつけたような楽器を弾いている。三線の弦を1本で弾く技も見せてくれている。

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そこに当時のサブカルアイドル戸川純が絡んで来る。これが最高の組み合わせ。よくぞ映像残してくれた。独特の踊りがクセになる。むしろ戸川純がこの映画の主役だったらよかったのにと思うくらい。沖縄には戸川純のような方はあまりいなさそうなのだが、この映画に本当ぴったりな人だ。デビッドリンチの映画にも女神的な女性が出てくるが、この映画の戸川純がまさにミューズだ。前作のパラダイスビューには細野晴臣さんも出てるし、本作の音楽はゲルニカの上野耕路さん。当時のテクノ、ニューウエーブ人脈が応援してくれている。ただ無国籍なシンセサイザーは今聞くとどうしても軽いなあと感じてしまう。ピアノだけ使って沖縄音階弾くとかの方がよかったのではと思います。

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ウンタマギルーの書体がこの時代を思い起こさせる。頭にヤリの刺さった男が海岸をフラフラ歩くインパクトのあるビジュアル。高嶺監督の「琉球夢幻つるヘンリー」では燃えている人だったか?こういうイメージ。死後の世界みたいな感じがなんとなくダリっぽくて沖縄の風景にぴったりだよね。寺山修司も思い起こさせる。ちなみにウンタマギルーとは「運玉森の義留」鼠小僧次郎吉みたいな沖縄芝居の民話的ヒーローです。

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本来子供の妖怪であるキジムナーは意表をついたこの方「宮里榮弘(えいこう)」さん。一度だけ那覇の安里のお店でステージを見たことがある。歌に三線にエイサー、空手、古武術、なんでもこなせる一人沖縄伝統芸能と言うすごい方です。一番の技がこの鎌さばき。流れる三線は登川誠仁の「あっちゃめー小」だ。またキジムナーがギルーの頭を手術するっていう展開もシュールでよかった

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水パイプのような淫豚草を吸う妖婦マレー。ここの音楽はサーランギーとかそういうインド音楽が使われてる。豚の化身と言う設定が沖縄ならではのものだだよね。沖縄ではウワーマジムンと言います。化け猫ならぬ化け豚みたいなもんかねえ。マレーの存在がこの映画をすごくエロスにしてるんだけど、こういう地元の妖怪なので、やっぱり沖縄の女優さんとか、紅型衣装とか、沖縄的なものにして欲しかった。キジムナーが素晴らしいアレンジなだけにここはちょっと不満。

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こういうシュール系映画は謎の設定やインパクトのあるキャラが面白いポイントなんだけど、肝心の主人公ギルーがどうも魅力不足。子分の「アンダクェーボージャー」もそうだ。この二人の関係、掛け合いなんかでもっとキャラを醸し出せればよかったのだが。ここがこの映画の一番不満なところでした。

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一見地味になりがちな西里親方と婆やウトゥーバーサン。これがやりを投げるという謎設定が面白い。婆やが支持して目の見えない親方がやりを投げる。(なんだそれーー)婆やは他人の見ている夢がわかるし。親方も妖婦マレーに悶々とした気持ちをかかけている。この二人の描写はすごくいい。

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なんと戸川純がトゥバラーマを歌うシーンがある。戸川純の歌声が思いのはか民謡にマッチしているのだ。これは意外だった。すごく不思議で魅力的なシーンだ。女性が歌って男性がツンダーサーのお囃子っていうのも普通と逆で面白い。

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高等弁務官とは米軍時代の沖縄の一番の権力者。植民地の王みたいなものだ。これがボストンテリア飼ってたり、豚と血液交換するとか、カマジサー(ムッツリ野郎)って揶揄されたり、これもすごくいい。演じる方はなんと「ブラザーフロムアナザープラネット」の監督さんだそうだ。

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撮影は本部の備瀬のあたりでやってるみたいだ。フクギ並木やこのワルミが出てくる。ワルミはパワースポットで人気が出ちゃって今は立ち入り禁止なったと聞いた。年寄りを姥捨山のような感じであの世に送り出すというエピソード。実際にあったわけではないと思うが、離島で人を減らすために妊婦に崖を飛び越えさせるとか、そういう言い伝えを連想させるような島の苦しい生活を思い起こさせる。ストーリに関係ないがインパクト大のシーン。

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この時、後ろで嘉手苅林昌さんが三線を弾いている。

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何と言っても林助さんと戸川純の共演が奇跡的コラボ。よくぞこれを映像に残してくれた。最高です。林助さんはポリカインのCMにも出てたっけ。

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背景的には復帰前。独立派とアメリカ派(琉球傀儡政府)の争いが描かれる。三線で歌う曲はなんとインターナショナル。共産主義革命の歌?

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ニライカナイからのご先祖様?の登場シーン。パっと現れるだけ。このセンスがツインピークスっぽくてゾクゾクする。

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この映画、まさに沖縄映画の至宝と言ってもいいほど素晴らしいのですが、ラストがよくわかりません。それまでの映画の流れからいって、ヘンテコエピソードがてんこ盛りなのですが、話の流れが意味不明っていうことはないんです。それがとても唐突に終わります。最後に出てくるのは人物は西原親方とは別人なのですが、同じようなタイプの人間でややこしい。ギルーは別の人?になって再登場だし、なんか円環構造のようでありながら、それを壊すような終わり方。絵的にも美しくない。何かのメタファーでもあるようですが、余韻もないし。

せっかく冒頭でヤリの刺さったギルーがさまようシーンがあるのだから、これはそのあとギルーがどうなったかを描くべきではなかったでしょうか?母親に会うとか、ニライカナイのご先祖に会うとか。
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